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知的障害者サッカーって何だ?
はじめ、私はどういう人たちのサッカーなのかよく分かっていませんでした。3月11日、私はあるサッカー関係者の誘いで、港北FCのOBチームに参加し、横浜の知的障害者サッカーチームと対戦。実際に、彼らと対戦してみると、ほとんど健常者のサッカーと変わりませんでした。少しだけ判断が遅いとか、見極めが難しいとか、そういう知的に障害を持つ人たちのサッカーだというのが少し理解できました。
今回は、その知的障害者チームのコーチを務めている小山良隆さんにお話を聞きました。
―まず、小山さんが勤めている横浜ラポールにいて教えてください。
「この横浜ラポールは、横浜市の外郭団体で、社会福祉法人のひとつです。8年前に建てられました。障害者スポーツを推進している組織です」
―横浜国際総合競技場のそばにありますよね。そこで小山さんはどういうことをなさっているのですか。
「僕は、ここで実際に障害のある人のスポーツ指導をしています。横浜ラポールには、プール、フィットネスジムとか、障害者の方々のためにいろいろな施設があって、施設ごとに職員がいます。僕はサッカー、テニス、陸上など、おもにアウトドア・スポーツの担当です。サッカーに関しては3つあります。知的障害者サッカー。肢体障害者(脳性麻痺、脳血管障害などで、手や足、あるいは全身が不自由な方)サッカー、電動車椅子サッカーの3つです」
―なるほど。この間、私がいっしょにサッカーをした方々は、その中の知的障害者チームだったわけですね。
「ええ。8月には全国大会があるので、今、がんばって指導しています」
―障害者というと、大変な部分ってあると思うですが・・・。
「いや、毎日楽しいですよ。やりがいがあります。スポーツっていろいろな楽しみがあると思います。レクリエーシュン的なものから競技スポーツまで、障害の有無に関係なくそれぞれの活動の目的はいろいろだと思います。僕は彼らがチャレンジしていく過程を見るのが好きです」
―どういう部分が楽しいのですか?
「彼らは知的ハンデを持っています。個人差はありますが、人の言うことを理解しにくいとか、自分の殻に閉じこもってしまうとか、IQが低いとか簡単に言うとそれが知的障害です。例えば、こちらから指示を出すと、本当は全然分かってないのに「分かった」と言う場合が多い。でも、何度も繰り返して教えていくうちに、少しずつ理解してくれるようになります。その過程を見るのが楽しいのです。自分の言うことを理解してくれた、と」
―私も、ときどき人の言うことに対して『めんどうだ』『うるさいな』などと思いつつ、「分かった」などと言ってごまかしますが・・・(苦笑)。
「それは、よくあるケースですね(笑)。『やりたくない』から分かったつもりでごまかしたり・・・。でも、個人差はありますが、言われたことを自分の頭の中で処理し、行動に移すことが苦手なのです。それはサッカーでも同じ。サッカーって感覚的な部分って大きいじゃないですか? その感覚を言葉で説明するのが難しい。試合中、例えばベンチから『マンマークにつけ、チャンスがあれば上がっていいぞ』とコーチングしたとします。しかし、いつ、どういうときがチャンスで、上がっていいのか、の判断がつきにくいのです。僕がうまく言葉で伝えないと、混乱してしまう。どうすればいいのか分からず、ずーとマンマークに固執するのです。言葉や表現を間違えると混乱してしまう。も
ちろん、ちゃんと理解してくれる部分もありますがね」
―やはり大変ですね。
「いや、そんなことはないですよ。うーん(ちょっと考えて)、彼らはピュアなんですよ。非常に素直です。普通、人って行動するときに、ある意味、無意識のうちに打算とかがあって、自分に得だったり、楽なことだったら自ら率先してするけれど、そうではない場合、計算して行動するじゃないですか? でも、彼らには『そんなのやっていられるか』というひねくれた部分がないです。大人の悪知恵みたいなものはない。たとえ、理解できなくても、受けとめようという努力はします。彼らと接していると、そういう部分でこっちも勉強したりして、人間として尊敬できます」
―なるほど。私は試合中、疲れたらさぼって歩いたり、ボールが取れないと思えば、追うのをやめちゃいますね。彼らにはそういう部分がないわけですね。
「『がむしゃら』ですね。そこがステキだと思うのです」
―うまく説明できませんが、小山さんが知的障害者の方にサッカーを指導することって、特別なことではないですね。言葉でキチンとコーチングすることとか、イメージを伝えることとか、そういうことって、何も身障者だけに限ったことではなくて、スポーツが持っている本質的な部分、つまり、人と人のコミュニケーションだし、がむしゃらに動くっていうのもスポーツだからこそできる『爽快感』かな、と感じますね。
「その通りだと思います。僕はみんなでいっしょにスポーツを楽しもうよ、サッカーをしよう、とアピールしたい。ユニバーサルな活動をしていきたいのです。ただ、やはり障害を持っていると、スポーツ以外のことで制限されたりすることも少なくないのです。彼らは選抜チームってこともあるのですが、横浜近辺のチームでは技術的に張り合えるチームがないんです。最近では港北FCなどの障害のないレベルの高いチームに試合をしてもらったりしています。それに加えて、2002年W杯のため、今後、横浜市のグランドがあまり使えなくなりますしね」
―なるほど。今後の活動をお教えください。
「はい。まず、8月に全国大会が御殿場で開催されます。それに向けて今は練習しています。全国各地から全16チームが出場して行なわれる大会で、僕たちのチームは、一昨年は準優勝。昨年は3位でした。今年の目標は決勝進出です。その次の目標は、2002年の知的障害者サッカーのワールドカップです」
―ワールドカップはひとつではないのですね。
「その辺、僕は詳しくはないのですが、98年フランスワールドカップの後も、知的障害者サッカーの世界大会がイングランドで行なわれたそうです。そのとき、あのガリー・リネカー(元名古屋グランパスエイトで、かつてのイングランド代表FW)が大会を盛り上げたそうです」
―へぇ、リネカーもガンバっているのですね。
「知的障害者のワールドカップは、2002年本大会の後、8月か9月に日本で開催される予定です。そのもうひとつのワールドカップに向けて、横浜のチームからひとりでも多く日本代表選手が出てほしいと思います」
―最後に、小山さんの2002年へ向けた思いを。
「うーん、知的障害者チームの選手たちと観戦できたら楽しいでしょうね。それから、海外から来た人たちとサッカーがしたい。本大会のとき、きっと往年の名プレーヤーらがやってくるはずですよね。大会期間中約1カ月の間で、試合のない日に、彼らを呼んで僕たちのチームといっしょにボールを蹴ってくれたら楽しいだろうなぁ」
―素晴らしい!! 実現できるといいですね。今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
2002年へ向けて、サッカー関係者、マスコミ、サポーター、ボランティアら様々な方が動き始めています。しかし、大会に関わらない(あるいは、関われない)サッカーファンもいます。私は、すべての人たちがそれぞれの立場で楽しめることが大切だと思います。多くの人たちが障害者のサッカーファンがいることを理解して、いっしょに楽しめる雰囲気・環境ができることを望みます。
2002年以降のために…。
(文/高木カズ)
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